完全に調和した 『ドミソ』 の和音を作るとき・・・
平均律と比べると、『 ソ 』 を 2セント上げ、 『 ミ 』 を 14セント下げることになります。ドの倍音のソやミの音程がその様になっているからです。
耳で聴いて『唸りのない和音』に合わせた結果と一致します。
でも、もし『完全に調和した和音』が大好きで、ピアノに『ドミソ&ソシレ&ファラド』(ハ長調の主要三和音)を純正和音に調律(例:キルンベルガーⅠ)したとしたら、たいへん困った事が起こります。
まずは調律の手順から・・・
C→G&C→eを純正和音に、G→D&G→bを純正和音に、F←C&F→aを純正和音に、これでドレミファソラシ7つの音の設定が出来上がりました。
この時、ハ長調のそれぞれの三和音は、
ドミソ○ レファラ× ミソシ○ ファラド○ ソシレ○ ラドミ○ シレファ(減三和音)となり、レ⇔ラがびっくりするほど狂っています。
また、♯が1つ付いたGdurの「レ♯ファラ」へも「レとラの狂った五度」で使えない!
♭が1つ付いたBdurの「♭シレファ」へも「♭シとレの三度」の唸りがたくさんに!
もし我々調律師が、お客様に黙ってこのような調律をすると、きっと次から呼んでもらえないことになる程です。
※赤の数字はCを基点にした平均律との音程差(セント)
※黒の数字は五度や長三度の音程(セント)
※( )の数字は純正和音との差
※うす緑の楕円は平均律の長三度を表したもの
※点線は平均律の五度(700cent)を表したもの
ドミソ&ファラド&ソシレを純正和音になるように調律してドレミファソラシドと弾いてみると、特にラの音には違和感を感じる方がほとんどです。
目でも確認したかったので、この純正律の音階を階段状に表してみました。
純正律(図例:ハ長調)を調律するとき、
1-1 ド→ソ 純正五度に。 1-2 ド→ミ 純正三度に。
2-1 ソ→レ 純正四度に。 2-2 ソ→シ 純正三度に。
3-1 ド→ファ 純正四度に。 3-2 ファ→ラ 純正三度に。
これで7つの音の階段が出来上がっています。
ミとラは大きな段(大全音)を登った後に小さな段(小全音)となるため、低く感じます。
ミは 次に半音が来ますが、ラは その後にまた大きな段(大全音)が来るので、さらに低さが強調されるのかもしれません。
ラは平均律と比べても、-2centのファに -14centの長三度が積み重なり、合計-16cent[c=±0]となっていることもあって低く聞こえるのかもしれませんね。
高い音程のDと低い音程のAとの五度は、明らかに狂っていると判るほど狭い五度(680cent)となります。
また、メロディーの際、高めにとると言われる導音[B]は、純正律ではむしろ低め(-12cent)になっています。
このページ:純正律
参照→ピタゴラスの音律
参照→ミーントーンの音律
参照→平均律
http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄