はじめに

兵庫県西脇市のピアノ調律師 岡本芳雄です。 このサイトをご覧いただき誠にありがとうございます。

バッハの時代、そしてまた、それ以前から現代に至るまで、
鍵盤楽器を調律するにあたっては、様々な方法が試されてきています。

神様のいたずらでしょうか・・・
一つの調の「ドレミファソラシド」でさえ、唸りのない「純正五度」と「純正三度」だけでは構成することができません。

『ピタゴラス音律』の手法で、「純正五度」を積み重ねると、唸りの多い「長三度」ができてしまい、『ミーントーン』の手法で、「純正三度」(唸りの無い長三度)を作ろうとすると、「五度」は気になるくらい濁ります。

ピタゴラス音律やミーントーン音律を12の鍵盤に当てはめようとすると、共に「狂った使えない音程」 が できてしまうのです。

鍵盤楽器の調律は、大昔から現代に至るまで『悩みと喜びの種』であり続けています。

『24の、どの調も気持ちよく演奏できる調律法』 が編み出されたのは、三百年ほど前、バッハが活躍した頃のようです。

現代のスタンダードである『平均律(Equal-temperament)』に対して、
「古典調律」と呼ばれている様々な調律法には、
「五度を純正に」のコンセプトの『ピタゴラス音律』や、
「長三度の和音を純正に」のコンセプトの『ミーントーン』、
そして、バッハの時代に確立されたと言われる「どの調でも演奏できるうまい具合の調律法(Well-temperd temperament)」の
ベルクマイスターⅢ』や『キルンベルガーⅢ』や『バロッティ』『ヤングⅡ』また、近年の様々な解読案の『Bach’s Well-tempered temperament』などをさしています。

これらの調律法は、どれもよく考えられていて、調によって異なる和音の響きやメロディーの音程に、それぞれの個性が認められたものです。

もちろん現代主流で、オクターブ周波数上昇の放物線に各音がピタリと沿った『平均律』は、ピアノのサウンドに良く合って、素晴らしい調律法の一つですが、この古典調律と呼ばれている様々な調律法も、とても興味深いものです。

古い時代の調律法が、特にクラッシック音楽にたいへん重要な意味をもっていること、
そして現代の音楽にもその影響が色濃く残っていることが、多くの研究からも明らかになってきています。

バロック音楽の時代に編み出された古典調律の持つ調性感(調による響きの違い)は、
教会でミーントーン調律などを身近に聴いて育ったヨーロッパ人にとって、 文化(習慣)そのものとも言えるのではないでしょうか。

古典調律については、著名な出版物やWebサイトをちょっと垣間見るだけでも、たくさんの方が深く研究されていて、ワクワクしてきます。
私も、調律師という立場から、感じたこと、経験したことを少しずつ発信していきたいと思っています。
音楽を愛好する皆さんの、何かしらお役に立てたら幸いです。

このサイトでは、私が開業当初(S.58)から取り組んでいる~現代ピアノへの古典調律法のこころみ~と共に、
ある音楽会で現れた『鍵盤楽器の為の十二音相環図』を紹介させていただいています。
『鍵盤楽器の為の十二音相環図』を描くようになって、「様々な調律法」の個性が、たいへん比較・考察しやすいものとなりました。

しかし、まだまだ考察や校正が不十分なことを自覚しています。
間違いや不都合がありましたらぜひご一報ください。訂正や再発見も加えつつ更新していく予定です。

これらの図は、
※個人でのご利用はご遠慮なくお使いください。その際一声かけていただけると尚嬉しいです。
(時々訂正&修正しています。出来るだけ最新にしてご利用ください)
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http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄