いろいろな「ミの音」(第三音)

“ミ(第三音)にもいろいろな音程がある”と言うようなことを言うと、戸惑われる方もいらっしゃるでしょうか?
いやもしかしたら、皆さんならもうご存知の事かもしれません。

ミの音の不思議をふりかえるために、まずは自然倍音を考えてみたいと思います。
1つの音には、いろんな音程の音が一緒に鳴っています。
そう! 注意深く聴くときこえてくる「ソ」や「ミ」などの音のことです。

~ ギターやピアノで実験 ~
○弦の長さの半分のところにそっと触れて鳴らすと「1オクターブ上のド」がプーンと鳴ります。
○弦の長さの1/3のところに触れて鳴らすと「1オクターブ+五度上のソ」
○弦の長さの1/4のところなら「2オクターブ上のド」
○1/5のところでは「2オクターブ+長三度のミ」の音がキーンと鳴っています。
これらの音は、触らなくても同じように鳴っているのです。

普段、ほとんど倍音の存在を意識していないのは、「ドの音」に完全に調和する(唸りのない)音程で鳴っているからでもあります。

「ドミソ」の和音を想像してみていただけますでしょうか? 聴こえてきますよね!
「ドミソ」が自然と想像できるのは、「ソ」も「ミ」も、「ド」の中にある音だからかもしれません。

さて、「ミの音」にスポットを当ててみましょう。

先ほど実験した「倍音のミ」の音程で「ドとミ」の和音をこしらえると、唸りのないどっしりした和音が聞こえます。純正三度と呼んでいます。
教会のパイプオルガンや、合唱・弦楽合奏・ブラスアンサンブルなどで聴かれる響きです。

「倍音のミ」より少し高いと、少しの唸りが生じて、ほのぼのとした柔らかな和音になります。
気の張らない普段着のようなこの響きは、きっとみんながホッとする和音だと思います。

現代主流の「平均律」では、「倍音のミ」より「だいぶん高いミ」の音になっています。
「平均律のドとミ」の和音では、たくさんの唸りが発生し、濁っているのですが、
ほとんどの人には、お馴染みの和音として普通に聴こえています。あるいは、元気のよい和音に感じることもあります。

「さらに高いミ」の「ドとミ」では、もう「その唸りの数」は聴きとれなくなって、
むしろ緊張感や不安感また広がりのある和音としても聴こえてきます。
メロディーで使われると伸びやかで心地よい音程に聞こえることもあります。

優れた演奏家の演奏を聴くとき、これらの音程が見事にコントロールされているのを感じる事があります。
また、それぞれの表情をもった「いろいろなミの音(第三音)」に耳が馴染むと、益々音楽が豊かに聴こえて来るのです。