※このページの「音律」は、7つの音で作られる長音階(ダイアトニックスケール)を指しています。( Cを基点に作図。[薄いところは12音でのピタゴラス音律]、[点線と緑の楕円は平均律] )
「ピタゴラスの音律」Pythagorean Scale
倍音の中で最も聞こえやすい音が第三倍音でしょう。
例えば、基音「C」に対して第三倍音の「G」は、私たちピアノ調律師もはっきりと意識し頼りにしています。
五度(例:CとGの関係)を、上記第三倍音の音程(唸りが無い澄んだ音)にしたのが純正五度[702cent]です。
すっきり澄んだ純正五度を6つ重ねると、ドレミファソラシドの音が設定されます。
F←C→G→D→A→E→B をすべて純正五度[702cent]に合わせた音律をピタゴラスの音律と呼んでいます。
しかし、この時に出来る三度の和音 F-a C-e G-b は、たくさんの唸りが出るので、ルネサンス時代には不協和音として嫌われていたであろうと考えられます。
この時の長三度の音程は、平均律と比べて8cent(純正三度と比べて22cent)高くなっています。
ピタゴラスの音律は、ルネサンス以前に作られた「グレゴリオ聖歌」などの単旋律で歌われる音程や、「日本の雅楽で使われる笙の和音」としても知られています。
笙などで使われる和音としては宇宙の広がりをも感じさせ、また、心地良いメロディーの音程としても使われていることが多いようです。
ビッグベンの鐘→ http://youtu.be/eSxf2XtI-5Y
ピタゴラス音律の音階を階段状にしてみました。
上記のように、ハ長調にピタゴラス音律を調律するには、
Cを基点にFからBまで、すべて純正五度に合わせます。
F←C→G→D→A→E→B
(←も→もすべて純正五度[702cent])
これで7つの音の階段が出来上がっています。
この音階の全音は、すべて平均律より4cent広い204cent(純正律の大全音と同じ)。
半音は、平均律よりも10cent狭い90cent。
この階段(ピタゴラス音律)では、純正律のようなデコボコ は感じられません。
長三度は、テンポ感のあるメロディーやアルペジオで心地良いと言われる広い音程[408cent]になっています。
半音の音程も、導音[B]を高めにとると良いと言われる狭い[90cent]音程になっているのが興味深いところです。
古典調律法で、6つの純正五度が並ぶ調では これと同じ階段となります。(例:Bach’sSealのFis dur&Des dur)
ショパンやドビュッシーの「♯や♭の多い調」の曲でも、この音律が想定され「美しい音律」として使われているように思います。
音階の図参照→ 純正律
このページ:ピタゴラスの音律
音階の図参照→ミーントーンの音律
音階の図参照→平均律
http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄