パイプオルガンから現代ピアノへ 古典調律法の変遷

ルネサンス時代から、祈りの中心に据えられたパイプオルガンの響きは、人々にとって、心のよりどころ に なっていたに違いありません。
またバロック時代のの調律法から発せられる 各調の響きは、当時の、そして後の作曲家にとっても、重要な音のパレットになったと考えられます。

17世紀~18世紀前半はパイプオルガン全盛の時代、名オルガニストでもあったバッハが その響きの特徴を熟知して使っていたであろうことも、想像以上のものと思われます。

祈り調律法の不思議な世界は、自然の理 や 祈りの心 と共にあります。

→ルネサンス初期からオルガンの調律に取り入れられていたと言われているMeantone調律法
→ルネサンス中期のPraetoriusの調律法
→バロック時代、パイプオルガン全盛の時代のSchnitgerの調律法
→Bachが図で書き残したと考えられている調律法の 渦巻き模様より と 印章の王冠より
→そして、Bachの印章から 現代ピアノに合うようにアレンジした調律法へ。

これらには共通する特徴があります。 その変遷が解りやすいように、パラパラ動画風にWindowsMediaVideoでまとめてみました。
(注:Schnitgerの調律法とBach/EmileJobin氏解読の調律法の間に きっと存在したのではないかと 私が思っている調律法も挟んでいます)

ぜひ、下のファイルをクリックしてご覧ください。

クリックオルガンからの古典調律法の変遷 ※私の想像 にもかかわらず、やや強引にもっともらしく作っています。ご了承ください。

[解説]
Meantoneでは、Gis-Esにウルフ (狂った広い五度)があります。 このひどいウルフは、12音の鍵盤楽器において最多(8つ)の純正三度を設定した結果です。
和声音楽が発達したルネサンス時代、調和した三和音を作るために純正三度が重視されるようになりました。純正三度を設定するために、狭い五度(696.5¢)が11こ並べられると、一つの広い狂った五度が出来てしまいます。ウルフをGis-Esへ配置したのは、♯が3つまで ♭が2つまで 主要三和音に狂った響きが含まれないように工夫されたものと思いますが、
その後のパイプオルガンの調律法である、Praetorius Schnitger にも残っています。
そしてウルフの名残りは、EmileJobin氏によって解読されたBachの調律法にも残っています。
MeanTone→Praetorius→Schnitger と、のウルフの緩和の工夫と共に現れて来たのは、いろいろな響きの三度です。そして、Bach/WTCの調律法では純正三度からピタゴラス三度よりも広い三度まで、個性豊かな三度が美しい配列で並んでいます。
Bach/印章から解読の調律法では、[純正三度386¢] を あきらめることにより、ウルフの名残の広い五度とそれに伴うピタゴラス三度を超える広い三度を解消するのに成功しています。
ウルフが完全に解消され、純正三度よりほんの少し広い三度389¢からピタゴラス三度408¢まで美しく並んだこの調律法は、現代の私たちの耳にとっても、たいへん好感のもてる調律法ですが、インハーモニシティーの強い現代ピアノには、うまく納まりません。
VeryWell 1.0 の手法で Bach’Seal 1.5Bach’Seal 1.0 にアレンジすると、上記の調性感を残したまま現代ピアノにうまく納まる調律法となります。

上記ファイルは、これらの調律法の変化の様子をわかりやすくするために、パラパラ動画風にしたものです。

2012-06-30

http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄