Equal

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平均律の音程と放物線『平均律』 Equal Temperament

平均律の音階

現代、圧倒的に主流となっている調律法です。
平均律へのチャレンジの歴史は古く、1600年ごろには すでに書き残されたものがあるようです。
→Wikipedia平均律

平均律は、1オクターブの中に12個の各音の音程が均等に並んでいます。

調律法の変遷をたどると、単旋律の時代のピタゴラス音律→和声が確立されたルネサンス時代のミーントーン音律→バロック時代に編み出されたWell  Temperamentという流れの後、平均律は、工業の近代化とともに主流になっていった調律法であろうと思っています。

棒グラフの赤棒は 110HzのA、220HzのA、440HzのA、880HzのAで、1オクターブごとに周波数が2倍ずつ増え、放物線を描くのを表わしています。
この美しい放物線に各音の周波数(緑棒)がピタリと沿っているのも平均律の特徴です。

平均律の和音の特徴は、均等に配置された400centの長三度の響き です。平均律の長三度は、明らかな唸りを持っていますが、ピアノでは、オクターブ三度や2オクターブ三度の響きとして使われたとき、心地良いゆらぎ(ビブラートのような効果)として感じられます。
700centの五度(純正五度より2cent狭い)の濁りは、ほとんど気にならない程度なので、どの調の五度の響きもほぼすっきりしています。

反面、古典調律法で聞こえる少ない唸りの三度多い唸りの三度、また澄んだ五度濁った五度による調性感(和音や音程の多様性)は再現できません。
ただ、現代のピアノは強弱の幅が広く、タッチの違いによっていろいろな表情を出せることから、古典調律の個性的な和音の響きに縛られない平均律は、演奏者の自由な表現には適しているのかもしれません。

平均律が普及し始めたきっかけは定かではありませんが、実際に調律をする際、たかだか1オクターブに12個の均等な割り振りは、案外簡単だったかもしれません。
純正律に出来る「レ⇔ラの狂った狭い五度」やピタゴラス音律 で生成される「広い三度の不快さ」を『なんとかしよう(この音をちょっと高く…  あの音をちょっと低く…) 』とやっているうちに、平均律が出来てしまうこともあったでしょう。
また、100centの半音200centの全音の音程を正確に聞き分けられる人があるかもしれません。
数学や物理に長けた人には、さぞ面白いチャレンジだったことでしょう。

音の階段に当てはめると、予想通りとは言え、まるで現代の街並みのようです。すっきり整った階段は、猛スピードで駆け降りることもできそうですね。

工業の近代化などによって急にピアノが増産され、調律師がたくさん必要になった時、「伝統的な音律を継承する」のは 簡単な事ではなかったと思われます。
そんな際、~作図が簡単だったように~ 調律にあたっても、ほぼ均等に音を配列するほうが、習得しやすかったのではないだろうか・・・と想像しています。
また、均等な美しさは、ピアノという楽器の特徴と共に、時代にぴったりマッチしていったんだろうとも思います。

近年、古いレコードがCDに復刻され、YouTubeなどからもその音源が聴けるようになりました。そこから聴こえるピアノの響きの多くが平均律の特徴をもっています。その事から、録音の技術が進んだ1900年代前半には既に平均律がスタンダードになっていたであろう事が伺えます。
また、製作されたピアノのクオリティーが非常に高かった頃と一致するのも興味深いです。

平均律独特の「美しい音」を引き出すためには、最低音から最高音までおよそ230本ある一本一本の弦の倍音構成をよく認識し、ち密な耳と正確な技による作業を積み重ねなければなりません。
ピアノは、特有の倍音構成を持っている為、最高音部は、五度や三度が広くなり、ピタゴラス音律のような響きとなっています。また、低音の合わせ方も全体の響きに大きく影響します。

平均律は、ピアノをはじめとする鍵盤楽器はもちろん、リコーダー・フルート・クラリネットなどの木管楽器、ギターなど、 現代のほとんどの楽器(工業製品)が平均律を定規に設計製作されています。

訂正2016-10-25:上記の文の中、「トランペットをはじめとする金管楽器」も平均律で設計・・・と書いていましたが、 金管楽器は、倍音を利用した音程で構成されている点で、平均律とは言えないとのご指摘をいただき、本文からその部分を省きました。

音の資料 2014/07/23 演奏:ジャズピアニスト大塚善章さん「My One and Only Love」 調律:平均律(岡本芳雄)

http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄