回想と感謝

Bach'sSeal inori私の周りでは、およそ30年ほど前から古典調律法が論じられるようになりました。(2011年1月現在)

40年ほど前の私が小学生の頃、地元の小学校でもリコーダーが導入され、ピアノのレッスンも盛んになってきていました。

高校生の頃、季刊リコーダーという雑誌に出会いました。リコーダーを吹くのが大好きだった私には、これは、たいへんな知識の宝庫でした。
また、所属していた吹奏楽部では、純正和音へのチャレンジが始まっていて、電子チューナーも使い始めました。

国立音楽大学別科調律専修に入学して、同級生の池末隆くんと友達になりました。(現在チェンバロやピアノフォルテの修復とメンテナンスに携わる音づくりの名人で、このサイトの強力なアドヴァイザー) 彼の家は、当時からチェンバロやビオラ・ダ・ガンバもある音楽一家です。
有村祐輔先生や上杉紅童先生も集まられていて、ちょうど遊びに行ったのがきっかけで、憧れの上杉先生のリコーダーのレッスンを受けるようになりました。

演奏家であり、リコーダーの設計もされていた上杉先生からは、たくさんの事を教わりました。
バロック時代のリコーダーの調律法のこと。 ピッチのこと。傍らにあったスピネットの調律法などなど・・・
また、リコーダー演奏のレッスンで習った、『主和音は純正和音に合わすこと。フェルマータは祈りを込めて・・・』は、今になって、ことさら重要な事となりました。

宇都宮の東京ピアノ製作所(EASTEIN)でのピアノ作りの見習い。
東京都港区白金台の斎藤ピアノ調律所でのピアノ修復の見習いを経て、
昭和59年3月末、故郷西脇に帰ってきました。 ピアノ調律師として、現代のピアノでも古典調律の色合い(調性感)を出したいと考えていました。

しかし、当時話題になっていたヴェルクマイスターⅢでのピアノ調律は、平均律のピアノに慣れ親しんだ我々現代人の耳には違和感があったのです。
特に白鍵にできる濁った五度や黒鍵にできる唸りの多い長三度には馴染めず、耳の良いお客様からも『狂っているように聞こえる』と言われることがありました。
また、純正三度の和音でさえ、「暗く不自然に聴こえる」と言われる方がたくさんおられました。
ご家庭でも普通に親しんでいただけるように、濁った五度を少し緩和して・・・うなりの多い三度を少し緩和して・・・

『ゼロビートの再発見』平島達司(S.58/10/01)を読みながら、机の上でも 毎晩とりつかれた様に、
父の持っていたエプソンハンドヘルドコンピューターHC-20と紙の表も傍らに、へたな試算を繰り返しました。
やがて綺麗に割り振れた時は、胸が膨らみ飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。→VeryWell0.8

ちょうどその頃、母校国立音楽大学で開かれた国立楽器技術研究会に平島先生が招かれることになりました。
本部から私に、[講演依頼と東京へのお伴] を命じられ、幸運にもゆっくりとお話する機会を得ました。
新幹線の道中で、上記調律法を聞いていただいた時、子ども同士の会話のように喜んでくださり、とても嬉しかったのをよく覚えています。
『五度圏の図の中で考えると、三度の音程も容易に知ることができる』こともその時教えていただきました。(この事も十二音相環図が出来るにあたって重要な点となっています)

以来、ご家庭の調律でもコンサートの調律でも、今まで少なくとも5000台以上は、この仕組み
自称VeryWell-Temperament [適切さと うそっぽさ がちょうど見え隠れするネーミングでしょ(^_^; ]で調律をしてきました。
平均律にとても近い形(VeryWell 0.5~1.0)で実施してきたので、ほとんど気づかれることもありませんでしたし、
説明をするとたいてい空気が固まってしまいますので、ほとんどは黙って実施してきました。m(_ _)m
時折、調律法のことで話がはずんだり、レコーディングにも使ってもらえたのは、やはり嬉しかったです。ヽ(^◇^*)/

新しくて古いVeryWell-Temperament は、現代のピアノ調律でもその効果を発揮します。
VeryWell1.0なら「平均律のピアノに慣れた耳」にも違和感なく、サウンドの隠し味として調性感を感じていただく事が出来ると思います。
VeryWell2.0は、3種類の五度を使うVeryWell1.0の基本コンセプトです。VallotiやYoungⅡに近い和音構成となります。三度の和音の個性もだいぶんはっきりしています。

また、三度・五度の個性を緩和する「VeryWell1.0の手法」でいろんな古典調律法をアレンジすると「古典調律が私たちの耳、そして現代ピアノの設計の特徴に合ってくる」のも判りました。
これらの考え方や「図」は、いろんな方に利用していただきたいと思い、ここにご紹介させていただいています。

鍵盤楽器の為の十二音相環図』がやって来たのは、
2006年11月11日、加古川カトリック教会で行われている、バロックバイオリンの佐藤泉さんのコンサート(バッハからのメッセージNo.7)の公演中です。
このコンサートでは、バッハの音楽の調性感についてのお話がありました。
そのお話を聴きながら、コンサートのチラシの背景に使われていた十二音相環図とそっくりなマンダラ図に目が留まった時、それまで自分が描いていた調律の図とも相まって、サーッと開けるように舞い降りてきたのです。

この作図が完成したことによって、長年取り組んできたオリジナル調律法を、視覚的にも紹介できるようになりました。
(作図へのチャレンジは、私のブログもぜひご覧ください。→1,一番初めの手書き2,MSワードで作った時3,ADOBEイラストレーターで

そして、平島先生や、多くの専門の方々が研究を重ねてこられた 主だった古典調律法 についても、その研究データを元に作図させていただきました。
これらの図は、オルガン・チェンバロを演奏しておられる方や音律の研究を始められる方に、ぜひご活用いただきたいと思っています。
古典調律を深く研究されている方の研究発表などにもご利用いただけるのではないでしょうか。

尚、「古典調律」の図や説明にあたっては、私自身まだまだ理解不十分のまま書いています。
また次々と出てくる問題点にも興味が尽きないため、時折修正・訂正しながら更新しています。間違い・ご意見などがございましたら、どうかご一報をお願いします。

※図の中の祈りのイラストは、作図のきっかけとなった佐藤泉さんのコンサートのお話の中の、『神のG キリストのC ・ ・ ・』 にちなんで、
このサイト製作をサポートしてくれている妹Michiko Whippleが描いてくれました。

最後になりましたが、この作図をする機会に恵まれたこと、そして、
いろいろな人のお世話になってご紹介できることに心から感謝の意を現わし、それを忘れないように考察を続けていきたいと思っています。

http://okamotopiano.jp 岡本ピアノ工房 岡本芳雄

 

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